
お笑いカルテット「ぼる塾」の酒寄希望さんが、本屋さんで気になった本を紹介していく月1連載の第11回をお届けします!
Profile

酒寄希望
さかより・のぞみ 1988年4月16日生まれ。お笑いカルテット「ぼる塾」のメンバーで1児の母。ぼる塾のブレーンとしてネタを書いて舞台に立ちながら、子育てエッセイや作品レビューなど執筆業でも活躍中。著書に『酒寄さんのぼる塾日記』(ヨシモトブックス)など。noteにも投稿中。最近は香港映画にハマり、現在250本以上鑑賞。note
最近、気になっていることのひとつに「ひとりごはん」があります。わたしは昔からひとりでごはんを食べることに抵抗がなく、家でも外でもひとりで食事をすることがよくあります。
「ひとりごはん」のすきなところは、実に自由なところです。誰かと食べるときは最低限の見栄えや栄養、そして気遣いなど、心に何かしらのストッパーがかかってしまうのですが、ひとりのときはそんなものはありません。雑に作ってテレビを見ながら行儀悪く食べることもできるし、誰かを誘うには人を選ぶような、激辛カレーをひとりで食べに行ったりもできます。
わたしはこの「ひとりごはん」の振り幅がとてもすきです。適当に作った納豆焼きそばも、仕事を頑張ったあとに汗をかきながら食べる激辛カレーも、どちらもひとりだからこその喜びがあるように思います。相手を気にせずに自分だけの欲を満たすことの幸せは「ひとりごはん」で学んだような気がします。
そして、わたしは自分だけではなく、人の「ひとりごはん」についても興味があります。これは、『孤独のグルメ』という漫画(ドラマ版もすきです)に出合ったことが大きいです。主人公の井之頭五郎が毎回ひとりで美味しそうにごはんを食べる姿を見ているうちに、誰かの「ひとりごはん」についても知りたくなり、取り扱った本を見かけると手に取るようになりました。わたしはコロナが流行する前から気になっていましたが、コロナ以降は「ひとりごはん」というジャンルにみんなが興味を持ったのか、メディアとしてとても拡大された気がします。
今回、一目惚れした本はそんなわたしの心にドンピシャにくるタイトルであり、まさにわたしが求めていた本でした。

『ひとりで食べたい わたしの自由のための小さな冒険』 著・野村麻里(平凡社)
この本を読み始めてすぐに思ったのは、「普通のおひとり様グルメエッセイではない」ということでした。気楽に食エッセイを楽しもうという心構えで読んでいると、突然ガツンと頭をやられることになります。著者の野村麻里さんは、あらゆる角度から「ひとりごはん」について追求しているのですが、その幅はわたしが今まで考えていた「ひとりごはん」以上に広いのです。
まず、最初のエッセイからしてこの本の並々ならぬ「ひとりごはん」に対する思いが伝わってきます。「ひとりで食べたい」は、野村さんと病で亡くなった友人との思い出が書かれており、淡々とした文章でありながら、苦しみややるせなさ、その中にもある温かさが伝わってきます。野村さんはその記憶から、ひとりでごはんを食べることの幸福を結びつかせ、短い文章ながらもこれほどまでに「食べることは生きること」という言葉と向き合う話はなかなかないと思います。

1発目のエッセイがそのように始まったので、「この本は真面目に食と向き合う本なのだろう」と、背筋を正して読み始めると、次のエッセイでは「豚の皮は美味しい」という、先ほどと打って変わって、野村さんの豚の皮に対する溺愛っぷりがひたすら書かれています。読んでいるこちらは「同じ本?!」と驚くほどの振り幅です。ですが、この豚の皮の話が強烈に美味しそうで面白いのです!
「豚の皮……めちゃくちゃ美味しそう」
登場する豚の皮のあまりにも美味しそうで! 以前、香港で暮らしていた野村さんが教えてくれる「乳猪(ルーヂュウ)」「梅菜扣肉(メイツァイコウロウ)」など、知らない豚皮料理がいくつも登場し、一気にお腹が減ります。そして、日本では豚皮は手に入りにくい為に、豚皮の代わりに豚足を使って作る、「フランス風のピエ・ド・コション」や豚耳を使って作る「ベトナム風サラダ」は、よだれが出るほど食欲をそそります。野村さんは自炊が得意な為に料理の描写がとてもリアルで魅力があります。
そして、彼女がこれほどまでに豚の皮が好物になるきっかけを作った「ロンドンのローストポーク・サンドイッチ」! このサンドイッチの描写は反則と叫びたくなるくらい素晴らしく、この話を読むと全員が豚の皮を食べたいという気持ちでいっぱいになると思います。先ほど、最初のエッセイと2本目で全然テイストが違うと書きましたが、よく考えると、2本目の豚の皮のエッセイも野村さんが真面目に食と向き合った結果、読者が豚の皮が食べたくて仕方がなくなると言う結果になるお話になったのだと思います。

とにかく、この本は野村さんの食へのこだわりと真面目さがどのエッセイにもたっぷりと注がれており、それによってひとつひとつのお話が全く違う影響を読者に与えつつも、統一感のある1冊になっています。
コロナ禍で変化した食について言及した「新型コロナ時代の献立表」は、コロナが食に及ぼした影響を改めて実感したし、ひとり客に優しい飲食店の一蘭や立ち食いソバの店員さんにインタビューしたエッセイはお店側から見る「ひとりごはん」を知ることができます。森茉莉の『私の美の世界』や、『孤独のグルメ』『ゆるキャン△』など「ひとりごはん」の本を題材に書かれた章もあるし、自炊する人としない人の意見の違いが書かれたエッセイも面白いです。
「どれもこれもひとりごはんだ。ひとりごはんって言っても、本当に色んな角度があるんだな~」

野村さんの「ひとりごはん」の角度はまだまだあります。ひとり温泉やひとり海外旅行での食事については、旅行エッセイとしてもワクワクしますし、「ひとりご飯修行のススメ」は、切り口が素晴らしく、「ひとりごはん」が苦手な方にぜひ読んで欲しいし「ひとりごはん」好きもハッとする内容となっています。
野村さんはこうおっしゃっています。
美食家である必要はない。ただ、自分が食べたいものを自分に供することができているか。イエスであれば、ひとりで食べることはいつだって”不思議に楽しい”と思う。
“不思議に楽しい”は、まさに「ひとりごはん」にぴったりの喜びだと思います。
こちらにも、一目ぼれ!

『アミュレット・ホテル』著・方丈貴恵 (光文社)
ファミリー向け、ペット同伴OK、インバウンド大歓迎など、色んな顧客に特化したホテルがありますが、この小説の舞台となるアミュレット・ホテルはなかでも特殊なホテルです。なぜなら、犯罪者御用達のホテルなのです! 宿泊客は殺し屋、詐欺師、窃盗グループなど極悪人だらけ! このホテルは2つのルールさえ守れば、偽造パスポートや銃器の手配などどんなサービスも提供してくれます。
その2つのルールとは、①ホテルに損害を与えない。②ホテルの敷地内で傷害・殺人事件を起こさない。
たったこれだけのことを守るだけで、この世の極楽を味わえるのです。わたしにとっては、「簡単なことじゃないの」と思いますが、極悪人ばかりの宿泊客にとっては少し難しいルールなのかもしれません。
このルールは当然のように破られて殺人事件が発生してしまいます。そこで登場するのがアミュレット・ホテルを代表するホテル探偵! このホテル探偵が一癖も二癖もある容疑者たちを相手に戦い、犯人を追い詰めて事件解決へと導きます。登場人物が悪人しかいないという状況がとても面白く、犯罪者御用達ホテルというクローズド・サークルの中で行われる殺人は一件解決不可能と思われるものばかりです。犯人のトリックなども悪人ばかりの小説ならではといった感じで何度も騙されます! しかし、天才ホテル探偵によって悪人の中の悪人は見つけ出されて最終的にはスッキリ! ホテル探偵「桐生」という新たにすきな探偵に出会えました。

『上杉くんは女の子をやめたい (1) 』著・やぶうち優 (小学館)
表紙の絵がとにかくかわいい! めちゃくちゃかわいい! ちょっと困った女の子の表情に一気に引き寄せられました。
一体誰の漫画なのだろうと思って確認したらなんとやぶうち優先生! やぶうち先生といえば、学生時代に水色時代シリーズや少女少年シリーズにハマって読み漁りました。やぶうち先生の絵柄はその良さをしっかり残しつつ、時代とともに変化していると聞いたことがありましたが、わたしが読んでいたあの頃とは違いつつも、今もこんなにかわいらしい絵柄なんですね! すごいです! 先生の描く女の子は天才的にかわいい!
主人公の上杉ケースケは、小さくてかわいいことが悩みの中学生男子。ある日片想いの相手、のえるが「上杉が女の子だったらめっちゃかわいくない!?」と話しているのを聞いてしまいます。落ち込んだケースケは神社で恋が叶うようにお願いしたのになぜか身体が女の子になってしまってさあ大変! と、思ったら、さらにそこにケースケの何でもできる幼馴染の瑛人が絡んできて! 女体化男子の三角関係ラブコメというやぶうち先生が描かれたら絶対に面白いと思ってしまうジャンルで、1巻からときめきをいっぱいもらいました。
登場人物が全員いい子なので安心して読めますし、何より女の子になった主人公のケースケがかわいくてかっこよくて応援したくなります! 『少女少年』を何度も繰り返し読んだことを思い出しました。大人になって再びやぶうち先生の作品を読むことの楽しさを発見する作品です。







































