
お笑いカルテット「ぼる塾」の酒寄希望さんが、本屋さんで気になった本を紹介していく月1連載の第7回をお届けします!
Profile

酒寄希望
さかより・のぞみ 1988年4月16日生まれ。お笑いカルテット「ぼる塾」のメンバーで1児の母。ぼる塾のブレーンとしてネタを書いて舞台に立ちながら、子育てエッセイや作品レビューなど執筆業でも活躍中。著書に『酒寄さんのぼる塾日記』(ヨシモトブックス)など。noteにも投稿中。最近は香港映画にハマり、現在190本以上鑑賞。note
街で見かける個人書店が好きで、出会いがあったらなるべく入るようにしています。本屋さんによって違う魅力があり、気づけば購入する本もいつもと少し違うラインナップになったりします。輝いて見える本が違うといいますか、個人書店は一目惚れ読書にぴったりの場所なのです。今回も、偶然見かけた小さな個人書店に飛び込んでみました。
(わ~! 何これ! ワクワクする!)
店内に入ると、予想をはるかに超える本の数! こぢんまりした店内は本でいっぱいです。本棚と、入っている本の間に空いたわずかな隙間にも本が横にされ詰め込まれており、本棚に入りきらない分をカヴァーするように床に段ボールが置かれ、その中にも商品の本が並べられています。
(本の上に違う本を置いている! 斬新!)
平積みの本を手に取ると何故か下から別の本が登場するなどまさに宝探し! 漫画はすべてビニール掛けされておらず、棚には、「漫画の立ち読み禁止!!」と、力強い文字で書かれています。私が小さい頃に近所にあった小さな本屋さんも、そういえば漫画にビニール掛けされていなかったなと懐かしい気持ちになりました。
「〇〇の新刊ある?」
「用意してありますよ~」
私が店内を見ている間にも、何人かの常連さんが予約した本の受け取りや店主さんとのおしゃべりを目的に訪ねてきて、その何気ない会話を聞きながらの買い物もなんだかとても良い気持ちになりました。
(正直、本を探すにしてはあまりにも乱雑なのに、すごく楽しい。本への愛が伝わってくる不思議な本屋さんだな~)
別の本棚へ移動しようとしたとき、視界に突然大きな文字が入ってきました。
重松清
重松清。まるで書初めのように大きな紙が置かれています。「漫画の立ち読み禁止!!」と、おそらく同じ人が書いたのであろう力強くてキレイな文字でした。その文字の横には重松清さんの本がタワーのようにうず高く積まれています。この本屋さんならではの独特の重松清コーナーが完成されていたのです。
(重松清…懐かしいな…)
重松清さんは学生時代、周りの友人たちと夢中になって読んだ作家です。思わずいちばん上の一冊を手に取ると、やっぱりというか、次に出てきた本は別の重松清さんの作品でした。本のタワーは色んな重松清さんの作品が重なって完成していたのです。私は自分が手に取ったいちばん上の本に、運命的な出会いのようなものを感じました。
(私がこの本を買ったら、次の人はきっとまた別の重松清の本と運命的な出会いをするんだ。それって素敵だな)
まさに、この本屋さんだから見つけられた本でした。

『答えは風のなか』著・重松清(新潮文庫)
この作品は、子どもたちを主人公にした10編の短編集です(例外で最後のお話しだけ大人が主人公)。大人になったいまあらためて、重松さんは、子どもたちの視点で家族や友人、日常や周りへの悩みや疑問を描く天才だと思いました。そして、子どもたちが主人公だからといって決して子ども向け作品ではなく、かといって大人向けでもなく、恐らく、子どもも大人もこの本と出会ったいま、まさに読むのがいちばん心に刺さるという思いにさせてくれる本でした。

重松さんはこの短編集を、「自分のつくるお話のなかでも、特に『ああでもないこうでもない』の濃度が高いものになった」と、おっしゃっています。登場する子どもたちは本の中で答えを求めて多くを迷い、悩み続けます。
クラスメイトの都合の良い存在になってしまういいヤツ。お年寄りと若者の命の重さに違いはあるのか。知りたくなかった大人の事情を知ってしまう。名前がふたつある親友。他にも様々な問題が登場します。この作品は日常が舞台だからこそ、私たちの日常に溶け込んだ重い苦しみに気づかされます。このように、大人から見ても決して簡単に答えの出ない問題に、子どもたちが真正面からぶつかっていきます。
私は中でも、「いちばんきれいな空」という作品が好きです。絵の得意な主人公ミツルは学校のコンテストに応募するため、先生に自信作を提出します。テーマは〈きれいな空の絵〉。しかし、受け取った先生は、「ミツルくんは、ほんとうに、こんな空が好きなの?」と、ミツルの絵を否定します。ミツルの絵はくもりの空だったのです。先生は、ミツルは絵が上手だからコンテストに勝つために、青空の絵を描き直すことを提案します。
「きれいな空って、ふつうは青い空のことだと思うけど」
心からくもり空をキレイだと思っているのに、それはふつうではないと否定される。ミツルはコンテストに勝つために絵を描き直すか悩み続けます。褒められたいし、自分も勝ったほうがうれしい。けれども、やっぱり自分がいちばん美しいと思うのはくもりの空。

この作品の結末は胸に込みあげるものがあり、何度も繰り返し読みました。私自身、お笑い芸人をしていて自分の面白いと感じるものと世間とのずれに不安を感じることがあるので、このラストは大きな救いになりました。また、大人の私がこの作品を読むと、ミツルに書き直しをすすめる先生が決して悪い人ではないことが伝わってきます。そこが重松作品のすごいところのひとつだと思います。別のお話しになりますが、この本の最後に収録されている「あきらめ、禁止。」という、唯一の大人が主人公の短編を読むと、それまでの短編に登場した大人たち側の事情もより深く考察してみたくなります。大人も子どもと同じように悩んでいるのです。
この短編集は、すべてのおはなしの結末がなかなか別の本では体験できない異質さがあります。この本ならではの終わり方なのです。読了後、じっくりと考えたくなる本です。
最後に、この本を読みながら、ボブ・ディランの「風に吹かれて」を感じていたら、あとがきの重松さんの言葉でこの曲の名前が登場して、「おお! やっぱり!」と、嬉しくなりました。いま、これを書きながら聴いています。
こちらにも、一目ぼれ!

『あさりちゃん in パリ 』 著・室山まゆみ(小学館)
こちらの一冊も、『答えは風のなか』と同じ本屋さんで発見。あさりちゃんの文字を見た瞬間、「懐かしい~!!」と昔の記憶が蘇りました。
私が子どもの頃、田舎の祖父母の家に泊まりに行くときに必ず祖父母の家で読む用の漫画を買ってもらっていました。そのときによく買ってもらっていたのがあさりちゃんでした。そして気になったのがこのタイトル。「あさりちゃんinパリ……inパリ!?」そう! 「inパリ」の部分! ふつうは第何巻と書かれているところに、「inパリ」!(一応シリーズの103巻目にあたります。103巻ってすごい!)私が知らない間にあさりちゃんはパリにお引越しをしてしまったの? 懐かしい気持ちと新たなドキドキで久しぶりにあさりちゃんを購入しました。あらためてあさりちゃんを読んだら、「そうそうこれだ! このあさりちゃんワールド最高!」っと、一気にあさりちゃんの面白さを思い出しました。
私はとくにあさりちゃんのお姉ちゃんのタタミちゃんが大好きで、頭の良さと凶暴さを兼ね備えた彼女にとても憧れていました。タタミちゃんが登場する回は面白くてさらに勉強になる回が多いのです! この巻では、タタミちゃんの新美南吉の『でんでんむしのかなしみ』に感動する『あさりのランドセル』の回がとくに私のお気に入りです。あさりちゃんは何巻から読んでも面白いので、ぜひ本屋さんで見かけた巻を運命の出会いだと思い、手に取って読んでいただきたいです! ちなみに、「inパリ」ってこういうことか! と、作者さんのユーモアにしてやられました!

『つくって あつめる プーさんと森の仲間たち』(デアゴスティーニ・ジャパン)
こちらも同じ本屋さんで購入。一体どこまでが本なのだろうと思いつつ、本屋さんに必ずあるし、本屋さんの人気ジャンルでもあると思うのでこれもオッケーでしょう! そう! デアゴスティーニ! すべて集めると素敵な模型やDVDコレクションが完成するロマン溢れる分冊百科です。創刊号の値段がとってもお得なことでも有名ですね。
そんなデアゴスティーニでだいすきな『くまのプーさん』が始まっていたのです! 作って集めるとプーさんの名シーンをツリー型ドールハウスで再現できるとか! しかし、私はとても不器用なので果たしてそんな大掛かりなものを作れるのかしらと悩みましたが、それも一瞬でした。なぜなら、この創刊号についてくるプーさんのフィギュアがとっても可愛らしいのです。さらに、鏡とベッドもついて290円。安い……安すぎる……!! ドールハウスを作ることができるかは置いておいてとにかくこのプーさんのフィギュア欲しさに購入しました。
開けてびっくり! なんと接着剤とピンセットも同封されています! これはありがたい! 創刊号本編に収録された作り方の解説は丁寧でわかりやすく、それほど難しくないのでこれなら私でも作れそうです!(鏡とベッドまでは) さらに、読み物のページもあり、プーさんの自己紹介や『腹ぺこのプーさん(前編)』という物語も収録されています。これだけついて290円は創刊号お得すぎます! 最後まで集められるかわかりませんが、『腹ぺこのプーさん(後編)』が気になるのと2号はピグレット&ティガーフィギュアなので買います!


















