
『銀河の一票』Ⓒカンテレ
数々のヒット作を生み出してきた松本監督と佐野プロデューサーがタッグを組むことでも期待が高まるドラマ『銀河の一票』。二人が考える、人の心に響くエンタメとは? 制作秘話に迫ります。
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『銀河の一票』
政界から追放された星野茉莉(黒木華)は、政治の闇に対抗すべく、選挙参謀として都知事選に挑むことを決意。都知事候補に政治素人のスナックのママ・月岡あかり(野呂佳代)をスカウトする。毎週月曜22時~カンテレ・フジテレビ系にて放送中。
大きな反響を生むテーマこそ鉱脈を感じます
これまでプロデューサーとして数々の名作ドラマを生み出してきた佐野さん。物語の着想は、どのようにして得ているのだろう。
「見たことのないドラマを作りたい、と常に思っているんです。この組み合わせは今までにない、あの役者さんがこういう役をやったら面白そうなど、新しい要素を一つでも多く入れるよう自分に課しています。そうやって自分がワクワクすることが、この仕事をできるだけ長く続けるうえで必要だと思うので。ただ、そう思って作った作品が、社会や視聴者とフィットするかどうかは、正直わかりません。でも、いま自分が面白いと思っていることだけは間違いなくわかるので、その感覚を頼りにしているんです」
政治のドラマを作る原体験となったのは、2019年にアメリカに滞在していた時のこと。
「当時、ホームステイをしていましたが、その家では親子がフランクに政治の話をしていたんです。日本にはあまりない光景にカルチャーショックを受けましたし、母親が『政治は生活だよ』と言っていたのが心に残りました。その後『エルピス』を作った時に、政治を描いた部分に、ポジティブとネガティブの両面で、かなりの反響があって…。こんなに人がビビッドに反応するということは何か鉱脈があるのではと思い、政治のドラマを本格的に考えるようになりました」
『銀河の一票』では、茉莉が選挙参謀となるが、その手法を競う物語ではないという。「むしろ、知名度や人気投票のような側面のある昨今の選挙戦に、アンチテーゼを唱えるようなドラマにしたい。とはいえ、こちらから正解を提示しようということではありません。この作品が、自分は社会や政治に何を求めるのか、考えるきっかけになったら嬉しいです。自分たちの手で社会は変えられると信じられるような物語にしたいと思います」
Profile
佐野亜裕美
さの・あゆみ 東京大学卒業後、TBSに入社。プロデューサーとして『カルテット』などを手掛け、2020年にカンテレに移籍。『大豆田とわ子と三人の元夫』や『エルピス』で高い評価を得る。
人物のディテールを描くことで物語にリアリティが生まれる
ドラマ『ひらやすみ』『団地のふたり』『きのう何食べた? season2』など、松本さんが監督を務めた作品が軒並み話題となっている。野呂さんの言うように「日常の何気ない会話を大事にしている」と感じられる作風が、多くの人を惹きつけるのではないだろうか。
「ドラマの撮影現場はある意味、非日常です。でも、現場を離れれば、スーパーに買い物に行ったり、近所の人と話をしたりと、ごく普通の日常を送っています。私は、そういう基本的な生活の中にこそ、その人の個性や人間性みたいなものが表れると思っていて。どこで、何をしながらこのセリフを言うのか。キャラクターのディテールを描くことで、物語にリアリティが生まれると感じています」
『銀河の一票』の監督を務めることになったのは、佐野プロデューサーからの働きかけによるもの。政治とエンタメの掛け合わせに、今の時代ならではの可能性を感じたそう。
「最近は、自分が見ているSNSと選挙結果の乖離を感じている人も多いと思います。投票しても無駄なのではと、くじけそうになるかもしれません。でも、私たちは政治家を選ぶ権利を持っている。そもそも選挙には、どんなプロセスがあるのか。そんなあまり知られていない裏側を描いた物語が、選挙や政治に興味を持つきっかけになり、“選び続ける”行動につながるといいなと思っています」
主要キャストの黒木さんと野呂さんは、今や日本の映像作品で引く手あまたの存在。そんな二人について、「全く違うタイプだからこその、組み合わせの妙がある」と評する。
「黒木さんは、職人タイプ。リクエストを的確に受け止め、想像以上のお芝居で表現してくれます。野呂さんは、テレビで見たままの素直な人。お芝居に素のようなリアリティがあります。そんな野呂さん演じるあかりの情の深さにより、理性的な茉莉の感情も引き出されていく。二人のコンビネーションができあがっていく過程も、本作の見どころです」
Profile
松本佳奈
まつもと・かな 多摩美術大学卒業後、CMディレクターとしてキャリアスタート。荻上直子監督作『めがね』のメイキングを機に長編を手がける。2010年、『マザーウォーター』で監督デビュー。
anan 2493号(2026年4月22日発売)より






















