小林聡美、舞台『岸辺のアルバム』は「じつは結構笑えるところもあるのかもしれないと思っています」

舞台『岸辺のアルバム』に出演する、小林聡美さんのインタビューをお届けします。


じつは結構笑えるところもあるのかもしれないと思っています

今から約50年前に放送され、その衝撃的な内容で大きな話題を呼んだ名作ドラマ『岸辺のアルバム』。専業主婦と仕事一筋の商社マンの夫、大学生の娘と受験を控える高校生の息子という、一見どこにでもある普通の家族。しかし、少しずつその綻びが浮き彫りになってゆく。その妻を演じるのが小林聡美さん。

「原作ドラマは(脚本の)山田太一さんの作品の面白さがわかり始めた頃に一度見ていました。今回、久しぶりに見直してみたら、それぞれが事情を抱えて切羽詰まっていて、その大変さや苦みが今の年齢になってすごく理解できたんです」

ドラマ放送当時は、男性は外で働き、家庭を守るのが女性の役割というのが一般的だった時代。

「私が演じる則子は、自分が見てきた時代の昔の“お母さん”で、女の人がどんどん自由になってきた今では懐かしくも思えます。お父さんの亭主関白ぶりとか、今の人たちは観てどう思うんでしょうね。ただ、女性が抱えている問題はさほど変わりはないなと感じる部分もありますし、自分もこの時代ならば、自分の役割を覚悟して、則子のようにそれをまっとうしようとしていたかもしれないなとも思います。時代が変わっても共感できる部分があるのはなんでだろうと思いながら観るのも、面白いかもしれません」

多くの人が、家族に対して抱く幻想やある意味での希望に、容赦ない現実を突きつける作品だ。

「家族って、ひとつのチームとして機能していかなくてはいけない部分もあるけれど、それぞれの人生というものもあって。世の中の“こうあるべき”ではなく、もっと自分らしく生きていい、というメッセージも込められているのかなと感じます」

演出を手がけるのは木野花さん。脚色の倉持裕さんも含め、小林さんが約3年半前に出演した、やはり昭和の傑作ドラマを舞台化した『阿修羅のごとく』と同じ座組みだ。

「公演が終わって間もない頃にお話をいただいて。またまた大変なことになりそうだなと思いつつ、やらせていただくことにしました。前回、女性たちがイキイキと働いていて、本当に安心して頑張れる気持ちのいい現場だったんです。木野さんは、ご自身が悩んでいるところも隠さないし、一緒に悩みながら作っていっている実感が持てました。この仕事を40数年やっていますが、舞台の出演は10本くらいで、少し苦手意識があったんですが、木野さんとだと安心して悩めるし、恥もかけるんです」

その木野さんは、本作の舞台化を打診され、小林さんが出てくれるならと演出を引き受けたのだとか。

「木野さんのすごいところは、字面ではシリアスになりがちな場面にもおかしみを見つけてしまうところ。じつは結構笑えるところもたくさんあるのかもしれないと思っています」

それは、小林さんという俳優がもたらすものも大きいのではないだろうか。何気ない日常の些細なシーンでも、淡々としながらもユーモアを滲ませた小林さんのお芝居で、思わずクスッとしてしまうことは多い。

「とくに意識することはなく、自分ではあくまでフツーにやっているつもりで、後から人に言われて気づく感じです。人から、『聡美さんってつねに心の中でツッコミを入れている感じがする』と言われたことがありますが、まったく自覚がないとは言い切れない(笑)。そんな私が家族のために生きる女性を演じる、そのギャップも面白がってやっていきたいと思っています」

Profile

小林聡美

こばやし・さとみ 1965年5月24日生まれ、東京都出身。出演映画『2126年、海の星をさがして』は秋公開。エッセイも執筆し、近著に『茶柱の立つところ』(文藝春秋)がある。

information

『岸辺のアルバム』

専業主婦の則子(小林)は日々の家事に追われ、夫の謙作(杉本)は仕事一筋で家のことは妻に任せきり。そんな中、受験を控える息子(細田)は、家族の隠された事情を知ってしまい…。4月3日(金)~26日(日) 池袋・東京芸術劇場シアターイースト 作/山田太一 脚色/倉持裕 演出/木野花 出演/小林聡美、杉本哲太、細田佳央太、芋生悠、前原滉、伊勢志摩、夏生大湖、田辺誠一 指定席1万1000円ほか モチロン TEL. 03-3327-4312(平日11:00~19:00) 5月1日(金)~4日(月)に大阪公演あり。https://mochiron-ltd.com/stage/kishibe/

写真・小笠原真紀 スタイリスト・藤谷のりこ ヘア&メイク・磯嶋メグミ インタビュー、文・望月リサ

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No.2490掲載

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