意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「道路陥没」です。


下水管の老朽化は各地で抱える問題。早急に対応が必要。

1月末に埼玉県八潮市にて大規模な道路の陥没が起きました。下水管が劣化や腐敗により損傷し、土砂や地下水が流れこみ、下水管と道路の間に空洞ができてしまったためです。八潮市の下水管は1983年に整備され、耐用年数は50年とされていました。ところが実際にはそれより前に事故が起きてしまった。以前より、水ジャーナリストの橋本淳司さんは、水道管老朽化の問題は早く手を打たなければいけないと警告しています。下水管は交通量の多い場所ほど振動が激しく傷みやすい。都市部ほどリスクは大きいのです。

2015年に下水道法が改正され、国は全国の下水道事業者に5年に一度以上の点検を義務付けています。今回の現場も2021年度に埼玉県が独自に調査をし、直ちに工事が必要な状態ではないと判断していました。しかし今回の件で、これまでの点検方法では、地下深くで起きている問題を把握できないことが明らかになりました。

下水道事業はなかなか採算が取れず、1997年度に全国で約4万7000人いた担当職員が、2021年度には約2万6900人にまで減っています。技術力を持った職員を再び増やすことは難しく、これからはテクノロジーでカバーするしかありません。国土交通省が公表した都道府県別の腐食のおそれの大きい下水道管の長さ(昨年9月末時点)は、東京都が229km、大阪府163km、愛知県182kmなど、大都市ほど老朽化が目立っています。

八潮市の道路陥没後、アスファルトの崩落が広がるだけでなく、市内全域の水道管の一部停止や濁り水など水道水の使用に影響が出ました。もしも都市直下型地震が起きたら、このような陥没が至る所で起きる恐れがあります。

老朽化した下水道管を新しいものに取り換えるには、膨大なお金も人手も必要になります。今後は既存の下水道に頼らない街づくりも同時に考えていくべきかもしれません。能登半島地震の際、浄化槽を持つ地域は水を確保することができ、人々の拠り所になっていました。水道や下水という社会共通資本に対して、どれだけ財政を投入できるのか、そういうところへの投資も今後は求められていくと思います。

Profile

堀潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan 2440号(2025年3月26日発売)より
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No.2440掲載

推し旅 2025・春

2025年03月26日発売

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