
相手との正しい距離感を保ちながらスムーズにやり取りする、今どきのビジネスコミュニケーションをご紹介。ここでは、“電話”でのやり取りに注目します。
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【電話でのアドバイス】結論から先に話すこととエビデンスを残すことが大事。
こちらから電話をかける際、相手の状況はわからないもの。とくに携帯電話は「今よろしいですか?」と尋ねるのはもちろん、こんなことを意識して。
「携帯電話はいまだに電波が不安定なことがあります。途中で切れてしまうリスクを考慮して、結論から先に話しましょう。前置きもできるだけ少なくしたほうがいいと思います。また、相手はメモを取れる状況ではないかもしれません。人は最初に聞いたことが頭に残りやすい傾向があるため、やはり大事なことは先に言っておいたほうがいいでしょう」(コミュニケーションコンサルタント・宮本ゆみ子さん)
電話でのリスク回避には、もう一つ取り入れたい方法が。
「電話は会話の記録が残せません。確認用に電話の後で内容をまとめたメールを送っておくのが賢明です」(IT系起業家・けんすうさん)
こんな時どうする?
【ケース1】テキストの連絡に電話で返事をする相手から、テキストで返事をもらうためには?
待つのではなく自分でテキストに。
言った、言わない、などのトラブルを避けるためにもテキストが欲しい時は…。「相手を変えるより、自分で送ったほうが早いかと。『先ほどのお返事は、以下で間違いないでしょうか?』などと送れば、エビデンスを残せます。できれば、相手の会社の他の人もCCに入れておくと確実です」(けんすうさん)
【ケース2】留守番電話設定をしていない相手が電話に出ない。折り返しを待つべき?
急用の時はテキストの併用を。
携帯電話へかけるのは、緊急時のみというのが基本マナー。「そのため緊急性により対応が変わります。折り返しを待つぐらい余裕があるなら待ってもいいと思いますが、例えば『待ち合わせに向かっている最中に場所の変更があった』など緊急性が高ければ、ショートメッセージでも連絡を」(宮本さん)
【ケース3】テキストの連絡が遅い相手に、いきなり電話してもOK?
メールなら24時間ほど待って。
「相手にも都合があるので、少し待ったほうがいいでしょう」(宮本さん)。その目安を教えてもらうと、「ケースバイケースですが、メールなら送信後24時間くらい。既読がつくツールであれば、既読から半日ほど経ったら同じツールで催促を。それでも返事が来ない緊急時は電話をしてもいいと思います」。
【ケース4】留守電を聞くとテキストで返せる内容。それでも折り返すべき?
できれば折り返すのがおすすめ。
「相手が電話をかけてきたなら電話を好む人だという可能性が高いので、折り返してあげましょう」(宮本さん)。ただ、こちらが電車に乗っているなどすぐに折り返せないことも。「相手にもよりますが、僕ならテキストで送りつつ『お電話がよければ後でかけます』などと書いておきます」(けんすうさん)
【ケース5】会社の固定電話、個人の携帯番号、LINE通話…。どう使い分けるのが正解?
LINE通話はプライベートで使用を。
自分が話したい相手とは別の人が出る可能性のある会社の固定電話。「二者だけのやり取りではなくなるので、“相手に電話をした”という証拠を残したい時に有効。一方、携帯電話は、面識があるなど携帯にかけてよい関係性の人にとどめましょう。LINE通話は仕事では使わないほうが無難です」(宮本さん)
【ケース6】急用での電話は何時までならOK?
予めガイドラインを作っておく。
「18時までなど就業時間内に収めるのが、一般的なビジネスマナーです」(宮本さん)。また、社内のチームや取引先と、予めこんな取り決めをするのも手。「急用に何段階かのランクをつけておくのです。『このレベルなら何時まで電話連絡OK』『このレベルなら深夜でもLINEに連絡』など」(けんすうさん)
【ケース7】テキストで送ると長文になる相談は電話で説明したほうがいい?
テキスト次第でそうとは限らない。
「長文になるという懸念があるなら、メール本文やチャット本文は『ご相談があります。詳しくは添付ファイルをご覧ください』と概要にとどめ、ファイルに詳細を記すという方法もあります。それでも長文を読んでもらえるか心配なら『お電話で説明することもできます』と一文を加えましょう」(宮本さん)
【ケース8】出られないのに連絡をしないと何度も着信が。どう対応すればいい?
定型文でいったん返答を。
どうしても出られない時は、こちらの事情も察してもらえるような連絡を。「携帯電話によって『今は電話に出られません』といった定型文を使えるような機能がありますが、送信できる状況であれば定型文で返答をしてみて。オリジナルの文章を送れないほど立て込んでいることが暗に伝わります」(宮本さん)
Profile
宮本ゆみ子さん
コミュニケーションコンサルタント。元FM石川アナウンサー。企業や大学・専門学校などでマナーの講師を務める。著書に『最新ビジネスマナーと今さら聞けない仕事の超基本』(朝日新聞出版)など多数。
けんすうさん
「けんすう」こと古川健介さん。IT系起業家。IT企業「アル」代表取締役。学生時代からネット企業や事業を立ち上げる。著書に『物語思考「やりたいこと」が見つからなくて悩む人のキャリア設計術』(幻冬舎)。
anan2447号(2025年5月21日発売)より