Who's Hot?

〈WHO’S HOT〉内田雄馬「アーティストも声優も、ちゃんとビジョンを持って進むことが重要」

エンタメ
2025.04.23

高い実力を持ち、声優やアーティストとして第一線で活躍されている内田雄馬さん。今回はニューシングルの話だけでなく、内田さんの表現活動の神髄にも迫りました。

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TVアニメ『呪術廻戦』の伏黒恵役など声優・アーティストとして、圧倒的な存在感を放ち、視聴者やファンを魅了し続けている内田雄馬さんの、約2年ぶりとなるニューシングルが到着。しかも、今回は2作同時リリースというこれまでにない試み。作品のことだけでなく、内田さんの声優としての心得や、活動する上で大事にしていることも教えてもらった。

――今回12枚目のシングル『シンギュラリスト』と13枚目のシングル『ハートエイク』を同時リリースされました。これは、どのような経緯で決まったのでしょう?

TVアニメ『クラシック★スターズ』と『#コンパス2.0』のタイアップ曲を務めるお話を、同時にいただきまして。オンエアされる時期も今年の春ということもあり、それであれば…ということで初めて2作同時発売という挑戦をさせていただきました。

――「シンギュラリスト」は目まぐるしく展開するメロディと、内田さんのスキルフルな歌唱に魅了されました。改めてどのような楽曲になりましたか?

『クラシック★スターズ』の企画原案・製作総指揮を担当されているElements Garden上松範康さんが、楽曲の作詞・作曲もしてくださっていて。そのおかげで、アニメとの親和性が高い楽曲になっています。また、作品のタイトルの通り“クラシック”の要素を取り入れつつ、今っぽさを感じるサウンドも作曲・編曲の竹田祐介さん(Elements Garden)と共に巧みに交ぜているので、1曲の中で展開がすごく多い。聴いていて飽きないですし、むしろ何度も聴きたくなる中毒性を感じていただけると思います。

――「ハートエイク」の歌詞は“あなた”を失った“僕”の心情が鮮明に描かれていて、それと呼応するように、内田さんも感情的に歌われている印象を受けました。

ありがとうございます。『#コンパス2.0』は、原作のゲームから始まっていまして。ゲーム内の各キャラクターごとに、複数のボカロPさんが楽曲を書かれているんです。その流れを汲んで「ハートエイク」は、ボカロPのバルーンさんに作詞・作曲・編曲を担当していただきました。この楽曲は疾走感があって、何より曲自体に高い物語性がある。お芝居を作るときに近いようなアプローチができて、すごく楽しかったです。

――今回の2作はアートワークやカップリング曲も含めて、対照的な作風に感じました。

『クラシック★スターズ』は、クラシックという伝統的なものがモチーフになっているお話なので、「シンギュラリスト」もクラシックやロックといった、さまざまな要素を織り交ぜて楽曲が構成されています。一方「ハートエイク」は、『#コンパス2.0』が現代とは違うもう一つの世界にログインしていく近未来的な設定。ジャケットに映る背景の窓をイラストにするなど、近未来的な表現を入れてもらっています。「シンギュラリスト」にはアナログな要素、「ハートエイク」にはデジタルの要素があって、異なる魅力を感じていただけると思います。

――今作のタイアップをはじめ、内田さんは多くのアニメ作品で主役やメインキャラを担当されています。その作品の座長を務めることは、より一層作品への理解を求められることかと思いますが、内田さんにとって主演を務める醍醐味ややりがいは?

第一に、役を演じる上で主演かどうかは、正直関係がなくて。その世界において主演も端役も一人の人であることには変わりない。ただ、役者に与えられる役回りが変わってくるのかな、とは思います。仰るとおり、主演を務めると「この作品の座長はあなたです」と言われることが多いですし、収録現場や作品作りの雰囲気にも大きく関わってきます。主役は物語の中心にいることが多く、自ずと作品の軸になっていくため、どうしても現場の環境に影響する。そこは面白いところかなと思います。

――主演を務める際、収録現場で心がけていることはありますか?

自分の立ち居振る舞いが、いい作品作りに繋がってほしいと思っていて。「なるべく周りのことをしっかり見よう」「みんながやりやすい現場にしたい」というのは、常に考えていることですが、主演を務めさせていただく現場では、その意識がより強いですね。ただ、主演だからといって背負いすぎないことも大事だと思っていて。

――と言いますと?

背負っていい部分と、背負いすぎてはいけない部分があると思うんです。それは声優を10年以上やってきた中で得た気づきでもあります。主演を初めて経験するとき、どうしても多くのことを勝手に背負おうとしてしまったりするんです。ただ、どのセクションやどの立ち位置の人でも、作品に関わっているのはみな一緒で、主演だけが特別背負っているものではない。作品は全員で背負って作るものなので、「みんなで頑張ろう」と同じ方向に進むことが大事だと思うんです。作品は全員が背負うものであり、全員で作るもの。みんながやりやすい現場にしたい、というのはそういうことなんです。

――内田さんは、その環境作りを大切にされているんですね。

はい。それぞれが任された場所で、やるべきことに集中できる環境にしたい。そこも主演として作品に関わる醍醐味ですね。「目の前のことに一生懸命取り組んでいく」という大前提の下、みんなで作品を作るのは非常に楽しいです。

アーティスト活動を始めて“客観的な視点”が生まれた。

――内田さんは2012年に声優デビューを果たし、その6年後にアーティストとしての活動も始められました。声優のお仕事がアーティスト活動に還元された、と感じた経験はありますか?

たくさんあります。そもそも声優をしていなければ、アーティストになっていないですし。逆に、アーティスト活動を始めたことで、声優の仕事に活かせた経験も多くあったので、どちらもやってよかったなと思います。声優は一つの役に対して、一人で考える時間が多いんです。台本をもらって、自分なりに読み解いて、お芝居のイメージを決めて現場に持っていくんですね。若手の頃は自分の中で固まって完結してしまうこともありました…。作品全体の流れというよりも、「自分のキャラクターはこうなんじゃないか」と、視点がどんどん狭まっていってしまったり…。それがアーティスト活動を始めたことで、“客観的な視点”が自分の中に生まれたんです。

――それはどうしてでしょう?

アーティストの内田雄馬イコール100%の僕ではないんです。みんなで作っている存在なので、個人・内田雄馬はその要素の一部でしかないんですよ。そこにいろんな方が様々な肉付けをしてくださって、“アーティスト・内田雄馬”ができている。なので、そういう客観的な視点はアーティストになってからより鍛えられましたし、それが作品全体を見る力に変わったところは大いにあります。

――そこで培った力が、声優の現場作りにも活かされていると。

そうです。声優とアーティストがうまいこと還元されていくように、自分の中でも意識して活動していますし、そうじゃないと僕の中ではやる意味がないんです。声優を軸にした上で、よりブラッシュアップしていく一つの手段として、アーティスト活動がある。そういう意味では、お互いにうまく還元していけるものを探しながら、日々活動しています。

――目の前のことだけに注力するのではなく、もっと先を見据えているわけですね。

アーティストや声優にかかわらず、結局は何をしたいのかがすごく重要。それをしっかり考え、ちゃんと自分の中で道筋を立てて進んでいく。僕は20代の頃、いただいたお仕事を遮二無二頑張って取り組んでいくスタイルでした。その中で「これはよかったな」「これはダメだな」というのが両方見つかりましたし、そういう経験をしてきた分、今はちゃんとビジョンを持って進むことが大事だと考えています。なので、これからどうしたいのかで言うと、ちゃんとやりたいことをやれるようにしていく。そのためには充電することも大切ですね。やりたいことを実現するために、必要なパワーを蓄えることも不可欠だと思うので、そういうインプットの時間も作る。表現することを長く続けたいと思うならば、放出と充電は両方やっていかなきゃダメだよな、って思います。あと、僕の場合は声優を軸に活動させていただいているので、そこで得られた新しい刺激をちゃんと還元していく。それはアーティスト活動だけでなく、自分の人生にも還元していくことを心がけています。

――ちなみに、最近は何か刺激を受けることはありましたか?

3月に岡崎体育さんと対バンライブをしたのが、すごく刺激的でした。お互いに音楽のスタイルは全然違うけど、あの日に集まったお客さんはすごく楽しんでくださっていて。それはステージ上でも感じましたし、体育さんのパフォーマンスを脇で見させていただいたときも、とてつもなく会場が盛り上がっていて。やり方が違っても、心根や向かっている方向が同じだと、盛り上がれるし、垣根を越えられるんだなと感じました。

――そうして得た刺激を、次に繋げていくんですね。

身をもって体験したことに限らず、映画を観たり音楽を聴いたりとか、どんなことでもいいと思うんです。何でもいいから、ちゃんと自分なりに吸収する。その中でいいと思えること・発信したいと思えることを放出していくことが、いいものになるし、ちゃんとお客さんにも届くはず。そのためにも情報収集やエネルギーの充電などインプットすることも大事にしていきたいですね。

PROFILE プロフィール

内田雄馬さん

うちだ・ゆうま 1992年生まれ、東京都出身。TVアニメ『呪術廻戦』(伏黒恵役)、『WIND BREAKER』(桜遥役)、『メダリスト』(夜鷹純役)など数々の人気作品に出演。2018年に1stシングル『NEW WORLD』でアーティストデビュー。昨年4月に自身2度目となる日本武道館公演を成功に収めている。

INFORMATION インフォメーション

12thシングル『シンギュラリスト』と13thシングル『ハートエイク』が発売中。両シングルの完全生産限定盤には、それぞれの表題曲のミュージックビデオやメイキング映像などを収録したMカードが付属。さらに、歌詞カードに加えて“内田雄馬化カード”、ブロマイド、ジャケットのミニステッカーといった特典も封入されている。

写真・小濵龍平(SIGNO) インタビュー、文・真貝 聡

anan2443号(2025年4月16日発売)より

MAGAZINE マガジン

No.2443掲載2025年04月16日発売

自分を高めるスキルアップ! 2025

学びへの意欲が高まる春にぴったりのトピックスを集めた「自分を高めるスキルアップ!2025」特集。スキルアップを続ける小森隼さん(GENERATIONS)と武田梨奈さんのインタビュー、ChatGPT入門、野菜を育てるスキルを手に入れる方法、劇的成長が狙える大学院への道、趣味をスキルアップさせる愉しみなど、新しいチャレンジへの背中を押してくれる一冊です。さらに、初著書『半分論』が4月14日に発売される村上信五さんが今作に込めた想いを語るスペシャルな企画も。CLOSE UPには、B&ZAIのみなさんと、俳優の髙石あかりさんが登場します。

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