社会のじかん

堀潤の「社会のじかん」第485回:アウシュビッツ解放から80年

エンタメ
2025.03.25

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「アウシュビッツ解放から80年」です。

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現在も形を変えて続く民族浄化。目を背けないで。

第2次世界大戦中、ナチス・ドイツがユダヤ人を中心に虐殺した、ポーランドのアウシュビッツ強制収容所が解放されて、1月27日で80年になりました。ナチス・ドイツ占領下のポーランドでは、11の強制収容所が建設され、最大だった収容所がアウシュビッツ=ビルケナウ。現在は国立博物館として、展示を通して当時の歴史を辿ることができ、悲劇を二度と繰り返してはならないと世界中の人が訪れています。

1941~’45年に、アウシュビッツでは約110万人が殺害されました。そのうち約100万人がユダヤ人で、他にポーランド人捕虜や少数民族、同性愛者なども犠牲になりました。現在、ガザでは形を変えた民族浄化が続いています。トランプ大統領は、パレスチナの人々をアラブ諸国に移住させ、アメリカがガザ地区を所有し再建すると発言。大きな反発を受けました。ガザの死者数は、保健当局の発表では4万6788人(1月17日現在)。ロンドン大学大学院の推定では7万人を超えているといわれています。ガザの問題はまさに現代のホロコーストです。

第2次世界大戦中、ナチスによりユダヤ人らが強制収容所に送られる過程では、真相をよく知らぬまま業務に関わり、虐殺に加担してしまった人が大勢います。自分には関係ないと無自覚無関心でいることは虐殺行為の加害者の一員になりかねません。

第2次世界大戦が起きる直前には、国際連盟が事実上消滅しました。今、トランプ政権はWHOなど、国際協力から引き揚げようとしています。ドイツでは再び強いリーダーを求め、極右政党が第2野党に台頭しました。このまま第3次世界大戦が引き起こされるようなことがあってはなりません。

日本は原爆の犠牲になった敗戦国である一方で、他国を侵略した戦争加害国でもあります。この80年の間に東南アジアやアフリカ諸国が発展し、世界情勢は変わりました。日本は第1次、第2次世界大戦に加担してこなかった世界の国々と連帯して、大国に対して歯止めをかけることができると思います。3月10日は東京大空襲があった日です。戦後80年の今年、平和のためにできることを考えたいと思います。

PROFILE プロフィール

堀潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan 2438号(2025年3月12日発売)より

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