意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「高市政権誕生」です。
優しそうに見えて政策の中身は軍事化にまた一歩
10月21日に高市早苗さんが第104代内閣総理大臣に就任しました。憲政史上初の女性総理、アメリカでも成し得なかった女性のリーダーです。男性中心主義が根強い日本で、保守政党である自民党から女性の首相が生まれたことに、世界各国のメディアも驚きをもって報道しました。
財務大臣兼内閣府特命担当大臣、経済安全保障担当兼内閣府特命担当大臣という重要ポストには、それぞれ、女性の片山さつきさんと小野田紀美さんが任命されました。国会の答弁でも高市総理が、靴をネット通販で購入していると話すなど、生活者目線で語り、国会の空気もだいぶ変わった印象です。
東京都では小池百合子都知事が誕生した後、23区に女性の首長が増えました。今後は官僚や事務次官、民間にも女性のリーダーが増えていくことが期待され、それは歓迎すべきことです。
高市さん自身はこれまで極右的な発言をしていましたが、総理になってからは、靖国神社の秋の例大祭の参拝は見送り、外国人政策に関してもだいぶマイルドな物言いになりました。
笑顔でソフトに見えますが、政策を見ると、日本の軍事化が色濃くなってきています。官民が連携して戦略的投資を促進し日本経済の成長を実現させようと、「日本成長戦略本部」を立ち上げました。AI・半導体、造船、合成生物学・バイオ、航空・宇宙、デジタル・サイバーセキュリティなど17の戦略分野を挙げていますが、ほぼ全てが日本の安全保障政策と一体化しています。例えば造船分野が入った背景には、海軍の戦艦の保有数で中国がアメリカを上回っているという現状があります。今までは世界の海の警察はアメリカでしたが、そうではなくなってきています。航空宇宙産業や創薬でも中国は世界の中で存在感を増しています。
岸田政権下で安保三文書を打ち出し、軍事化が一歩進みました。高市政権ではさらにそれを進めることになります。アメリカとの関係もあり、軍事部門や安全保障分野に投資をすれば成長を見込めるでしょう。ただ、どこかの国の戦争を支えることになると思うと、平和を掲げてきた日本がするべきことなのか、改めて問わずにおれません。
五月女ケイ子解読員から一言

「韓国ドラマを見てると言ったり、米軍にガッツポーズで応えたり、等身大なアピールで国民の心を掴んだ高市首相。生活目線で語られ政治もより身近に感じる今だからこそ、かっこよさの裏でどんな政策をしているのかしっかり確認が大事なのですね」
解説員
Profile
堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。
解読員
Profile
五月女ケイ子
そおとめ・けいこ イラストレーター。楽しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。細川徹との共著、ゆるくておバカな昔ばなし『桃太郎、エステへ行く』(東京ニュース通信社)が発売中。
anan 2475号(2025年12月10日発売)より



























