ここ数年、急激に「時代劇」が活気づいている。伝統を踏襲しつつ、随所に新たな挑戦を取り入れ、リメイクも新作も花盛りだ。歴史・時代小説家の蝉谷めぐ実さんの見解から最新時代劇事情にフォーカス!


教えてくれた人

Profile

蝉谷めぐ実

せみたに・めぐみ 作家。2020年、「化け者心中」で小説野性時代新人賞を受賞し、作家デビュー。2022年、『おんなの女房』で野村胡堂文学賞、吉川英治文学新人賞を受賞。3月13日に、新刊『見えるか保己一』が発売。江戸時代に『群書類従』を編纂した全盲の天才学者・塙保己一の孤独や苦悩に迫る物語。

今どきの映像と物語で時代劇がアップデート

2024年にエミー賞を受賞したドラマ『SHOGUN 将軍』など、近年、時代劇の話題がにぎやかだ。小説『化け者心中』など、江戸時代を舞台とした作品で高い評価を得ている作家の蝉谷めぐ実さんも、最近の時代劇に注目している一人。

「そもそも時代劇は、現代を生きる私たちにとってある種のファンタジーでもあると思うんです。着物姿で人を斬るなんて、今の時代ではあり得ないわけですから。でも、舞台は日本なので、異国のファンタジーほど遠くない。ファンタジーの自由度とリアルを併せ持つところが、時代劇特有の魅力なのではと思います」

蝉谷さんが子どもの頃に親しんでいたのは、ドラマシリーズ『必殺仕事人』や、映画『陰陽師』など。しかし、最近の時代劇には当時とはまた違う面白さを感じているという。

「昔の時代劇は、映像も物語も、いい意味で単純で、わかりやすかったと思うんです。悪人が主人公に懲らしめられてスッキリする、といった具合に。でも今は、主人公と敵だけではなく、それを取り巻く周りの人たちにも、ちゃんとストーリーが用意されている。それに、例えばNetflixシリーズの『イクサガミ』ならデスゲーム、映画『侍タイムスリッパー』ならタイムスリップなど、今の人たちが入り込みやすい要素が取り入れられています。そのうえ迫力ある映像も加わって、もはや“時代劇は古くさい”というイメージはないのではないでしょうか」

昭和の頃には、地上波で毎週放送されていた時代劇。その数は徐々に減り、一時はあまり見かけなくなったが、ここへきて復活の兆しが。この人気は定着するのだろうか。

「今のように多様な時代劇が作られていけば、観る人はもっと増える気がします。ジャンルとしても“時代劇”という一つの枠にとどまらず、時代劇の中のミステリー、恋愛、社会派、転生もの…など、どんどん広がっていくかもしれませんね」

見どころ1|時代劇×〇〇。広がりゆくフィールド

勧善懲悪で終始する定番の時代劇から、ミステリー、転生ものなど今どきの要素を掛け合わせた時代劇へと変化。「動画配信サービスの発展でコンテンツの質や量が加速度的に上昇したこともあり、目の肥えた視聴者にリーチする工夫が凝らされるようになったのかも。『イクサガミ』は、殺し合いも辞さないデスゲームとの掛け合わせ」 Netflixシリーズ「イクサガミ」シーズン1独占配信中/シーズン2制作決定

『イクサガミ』

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岡田准一主演のNetflixシリーズ『イクサガミ』。舞台は明治初期。元侍の嵯峨愁二郎(岡田)は、病に苦しむ家族を救うため、莫大な賞金がかかるデスゲーム「蠱毒(こどく)」に参加する。圧巻の殺陣アクションも見どころ。全6話配信中。

見どころ2|圧倒的カメラワーク&映像美

ネオ時代劇のエポックメイキング的な作品といえるのが、ハリウッドで制作されたテレビシリーズ『SHOGUN 将軍』。「観る人に想像の余地を与えるような映像が差し込まれるなど、カメラワークがすごく練られていると思いました。この作品をはじめ、最近の時代劇は、衣装や美術の美しさが映像から存分に感じられるところも魅力です」 『SHOGUN 将軍』ディズニープラス スターで独占配信中 Courtesy of FX Networks

『SHOGUN 将軍』

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「関ヶ原の戦い」をモデルにした海外小説『将軍』を、真田広之プロデュース兼主演でドラマ化した『SHOGUN 将軍』は、テレビ界のアカデミー賞ともいわれるエミー賞で、史上最多18部門を受賞。ディズニープラスで全10話独占配信中。

見どころ3|日本ファンタジーの源流

時代劇は、「日本のファンタジー」と蝉谷さん。「登場人物は日本人で、舞台も日本。でも、着物や髪型、刀で人を斬るという行為は現代とは異なります。その“近さ”と“異世界”のバランスが、『ハリー・ポッター』などとは違う日本独自のファンタジー性を生んでいる。だからこそ、映画『八犬伝』に出てくるような霊的な力や呪術も、わりとすんなり受け入れられるのだと思います」 DVD、Blu-ray発売中 Ⓒ2024『八犬伝』FILM PARTNERS. 発売元:キノフィルムズ/木下グループ 販売元:ハピネット・メディアマーケティング

『八犬伝』

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日本のファンタジー小説の原点とされ、さまざまなエンタメ作品に影響を与えてきた『南総里見八犬伝』。それをモチーフにした山田風太郎の名作『八犬伝』を2024年に映画化。

見どころ4|市井の人の魅力に着目

近年の時代劇は、主人公と敵だけではなく、周囲の登場人物にもスポットが当たるように。「例えば、映画『仕掛人・藤枝梅安』は、主人公の梅安に限らず、梅安の相棒・彦次郎の背景を掘り下げたり、そこに絡む女性の人生も描かれたりしている。それにより物語にリアリティや深みが生まれて、感情移入しやすくなります」 Ⓒ「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社 Prime Videoにて好評配信中

『仕掛人・藤枝梅安』

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映画『仕掛人・藤枝梅安』は、腕のいい鍼医者と、悪人を成敗する“仕掛人”という2つの顔を持つ藤枝梅安(豊川悦司)の物語。池波正太郎生誕100年となる2023年、代表作の一つである同名時代小説シリーズを二部作で映画化。

取材、文・保手濱奈美

anan 2485号(2026年2月25日発売)より
Check!

No.2485掲載

エンタメの系譜 2026

2026年02月25日発売

日本エンタメ界で長く人気を誇る“王道”エンタメの現在地を深掘り。若手のブーストステージ『教場』をはじめ、再注目を浴びる時代劇や特撮戦隊ヒーロー、ラブコメの魅力も考察。5月で閉場する大阪松竹座ゆかりのグラビアも必見。さらに、現在ボーイズグループオーディションを手掛ける秋元康さんにもロングインタビュー。スポーツエンタメの頂点ともいえるメジャーリーグに関するページも。

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