意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ミャンマー大地震」です。


大地震と内戦で身動きとれず。今こそ支援が必須。

3月末にミャンマー中部でマグニチュード7.7の大地震が起きました。死者3759人、負傷者5107人、114人の行方不明者が出たと軍事政権は発表していますが、実際にはもっと多いのではないかといわれています。ミャンマーは4年前にクーデターが起き、今なお激しい内戦が続いています。実権を握る軍事政権は、外国メディアに対して入国ビザを出さないなど、外部からのアクセスを制限し、情報に壁を作っているため被害の全貌を把握できない状態なんですね。

地震発生直後も国軍は民主派勢力側への空爆を続けており、今なお支援が届かず、不衛生な状態が続いています。

ミャンマーにルーツを持ち、日本に帰化したデザイナーの渋谷ザニーさんにお話を伺ったところ、今回被災した中には古都マンダレーも含まれており、1000年以上の歴史的建造物なども崩壊してしまいました。これまでは文化財があることで攻撃を避けられていたこの地域にも戦闘が持ち込まれるのではないかと、心配していました。

被災された方々の多くは、屋外で避難生活を続けています。「この土地を離れたら、誰かに奪われるかもしれない」という危機感から、家のあった場所から離れられないといいます。軍事政権は中国やロシアと関係が深いので、復興計画を中国やロシアに委ねることになれば、中露の人々の街になってしまいかねない。民主化を求める市民は、ミャンマーという国が奪われるのではという不安も抱えています。

その後軍事政権は、救援活動を優先させるために、5月31日まで停戦すると発表したにもかかわらず、民主派勢力が運営する学校を空爆するなど、宣言は守られていません。

クーデターが起きる前のミャンマーには日本企業も多く進出し、日本政府もODAによって橋や道路を造るなどしてきました。アメリカはトランプ政権になり、世界の人道支援から手を引いています。ミャンマーの人々にとっては、今こそ日本への期待が相対的に高まっています。日本も経済的不安などを抱えている状況ですが、アジア情勢の安定のためにも政府はしっかりとした支援を届けてほしいと思います。

Profile

堀 潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan2449号(2025年6月4日発売)より

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先行きに不安を覚えたり、何かしようとすると邪魔が入ったりするときは、運命的に見て「止まれ」の表示かもしれません。右も左もわからないまま進むな、それだったらブレーキをかけて現状維持するなかで、ちゃんと調べるなり用意をしてからにすること、というのが今日の暦の指針です。正確な情報を得たうえで動きましょう。

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