
凛とした色気と、力強いリリックで世の女性たちの支持を集め続けるAwichさん。そんな彼女がいま伝えていきたい、セックスのマインドとは? 真摯に、たっぷりと語っていただきました。
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性への本音を、ためらわずにリリックに乗せてきたAwichさん。「エロスを探求することが人生のミッション」。そう語る通り、10代の頃からさまざまな形でエロスを学んできた。
「仏教やヒンドゥー教にある『タントラ』という性エネルギーの教えを中心に勉強してきました。ほかにも、歴史、心理学、解剖医学とか…例えば、インスピレーションを司るといわれている脳の松果体と陰核がつながっている可能性があることとか」
その探求のはじまりは、違和感や憤りと向き合うことだった。
「17歳の頃、父の車に乗っている時にラジオから性教育の話が流れて『お前はもうセックスしたことがあるのか?』と聞かれたんです。直球な質問でしょ?(笑)当時、セックスは経験していたけれど、私の中では“体を差し出している”という感覚がすでにあった。でも、その場ではすべて呑み込んで『ある』と答えたんですね。そこで、父から返ってきたのは『お前が幸せならいい』という一言だけ。親としていろんな考えがあったのかもしれない。でも、17歳の自分には無責任な応答に聞こえて、腹が立ったんです」
父とのやり取りだけが理由ではない。なぜこんなにも、性に心を揺さぶられるのか。

「性的なエネルギーって、どうしてこんなにも人を支配するんだろう? ってずっと謎だった。だから、その特別なパワーを自分のものにしたかった」
Awichさんが問題視するのは、「女性が自分の快感を後回しにしてきた」ということだ。そして「女性であること」がその原因であるかもしれないということ。
「“良いセックス=相手に満足してもらうこと”と思い込んでいた。自分ではそうじゃないと思っていても『男を立てること』が美徳とされてきた社会の中で生きてると、知らぬ間にそれが体に染み込んでいる。そして、男性には射精というわかりやすい指標がある一方で、女性は自分が感じているかどうか、自覚しにくい身体構造になっている。だからこそ、今は女性である自分自身が、自分の気持ちよさを知っていく努力も必要なんじゃないかなと思ってます」
学びの実践として辿り着いたのが、皮膚感覚を通じて快感を開拓していく「スローセックス」だ。
「1時間ぐらいかけてじっくり肌に触れていくんです。長いですよね(笑)。最初はくすぐったくて面食らいましたけど、試してみると自分に革命が起きた。『女性は全身が性感帯』ということが、初めて理解できた。大事なのは皮膚なんだって。とある男性と、肌に触れ合うだけの時間を過ごしたことがあるんです。その人は、外見が好みではないし、話し方とかも苦手なタイプだったんですけれど(笑)。でも、彼の指先から、リスペクトをすごく感じた。キスも挿入もない。でも、不思議なぐらい気持ちよくて、同時に彼を愛おしいと思うようになった」
本当の愛は、自分の気持ちを誰よりも理解すると見つかる

「セックスの快感を10とするならば、挿入が占める割合はせいぜい1」。Awichさんは、そう言い切る。
「いま挿入で感じてる快感の10倍は気持ちよくなれるということ。肌に触れ合うことで、誰とでも深く繋がれるような感覚になる」
それは、トラウマをも溶かす作用があるという。
「誰しも、生きているだけで、悲しみや怒りが知らないうちに体に刻まれていくと思うんです。セクハラだったり、何気ない一言だったり。特に女性は、社会構造的にトラウマを溜め込みやすい気がしていて。だから、優しくしてもらっても素直に受け取れないこともあるし、我慢する場面だって多い。もちろん、私だってそう。でも、思いやりのある密着は、トラウマで硬くなった体を柔らかくしてくれる。誰かとわかり合える感覚こそが、セックスの本質なんだと思っています」
そのためには、女性の方から自分の欲求を理解していってほしいとAwichさんは念を押す。
「『愛される努力』ってよく聞くけれど、それって、相手からの見返りを受け取るために、自分を抑える方向に流れがちじゃないですか。『あなたがどうであっても、私はあなたを愛する』と思えることが、本当の愛なはず。そのためにはまず、自分の気持ちを誰よりも理解しておくことが大切だと思っていて。それができて初めて、誰かを愛せるようになる。そういう姿勢が、自然と色気になっていくような気がします。色気がある人は、自分のことをよく知っているし、その上ですべてをさらけ出せる。人間として生まれたからには、誰だって幸せとか絆みたいなものを大事にしたいはず。そのためには、自分の快感を抑えつけないでほしい。シンプルなスキンシップでも、十分満たされる。キスより手前の行為です。優しい接触で絆が生まれると、自分でもびっくりするような景色が見つかる気がします」
Awichが回答。“愛とセックス”のリアルな悩み

なかなか人には聞きにくい、心の内に秘めた性に関するモヤモヤ。日頃から悩み相談を受けることが多いというAwichさんから、一つひとつ丁寧に、芯に迫る回答が。
Q1. ワンナイトだけで関係が終わってしまったり、セフレ関係になってしまったり、気になる人とはいつも体の関係だけで、交際まで発展せずに終わってしまいます。でも、体の相性を確かめないで付き合うことも不安で、セックスを優先してしまいます。
A. 肌が触れた時の自然な感覚だけで本当の“相性”は、わかるはず
「体の相性」ってよく聞くけど、私はあまりピンときていない。挿入されて果てる間の快感を指しているなら、それって「男性の満足度」に依存しているような気がするんですよ。私が思う「いい相性」は、肌に触れ合って自然と絆が芽生えるかどうか。付き合う前に「確かめたい」気持ちはわかります。でも何を「確かめる」のかちゃんと認識しないといけない。「体の相性」って形とかフィット感の問題じゃなくて「私の体をどれだけ理解しようとする人なのか」とか「私のことを性欲処理の対象ではなく、触れること自体に喜びを感じてくれる人なのか」という点。不安が残るなら「挿れないで」と言葉で伝えてもいいです。
Q2. もう数年付き合っている気心の知れたパートナーがいます。とても優しい人ですが、最近は刺激が感じられなくなって物足りなくなってしまい、たまにふと、ぜんぜん違う人と関係を持ちたくなってしまいます。この浮気心にはどうやって対処すべきなのでしょうか? また、そもそも関係を続けるべきなのか、悩んでいます。
A. 相手に物足りなさを感じるならまずは自分の欲求を見つめ直して
誰だってそういう気分になる時期はあると思います。でも、エクスクルーシブな関係を築けた時の、満足度はすさまじいもの。挿入の快不快を超えた「セクシュアルエネルギーの交換」ができると、「体の相性がいい/悪い」なんて話を超えた繋がりが生まれるから。それって結局、「この人を大事にしたい」という気持ちが、指先から肌に伝わっていくこと。いま物足りなさを感じているなら、まず自分が相手に何を求めているのか、見つめ直してみてほしい。その後、自分の求めていることを理解してもらう努力をする。そしてそれでもわかってもらえないと思うなら、その人との関係をどうしていきたいか、ゆっくり考えてみて。
Q3. トランスジェンダーです。友人との会話の中で、子どもの話になると、自分には生殖能力がないことを思い知らされて打ちのめされることがあります。体が同性という、生殖という目的が果たせないセックスが「負い目を感じてしまう行為」になるのが辛いです。相手と一歩先に踏み出す勇気を出すにはどうすればいいですか?
A. 誰しもが、目先の快楽ではなく、自分と相手の体に向き合ってほしい
セックスの刺激や興奮にフォーカスしてしまうと、誰でも苦しくなる部分がある気がしていて。もっと深いところで通じ合える可能性に目を向けてみてほしいです。男性だって丁寧なタッチですごく感じるし、その時の体は美しい。どんな性のあり方であっても、変わらない気がします。それに、「血の繋がりだけが絆ではない」という前提が自分の中にあります。私自身、他界した夫には、私が産んでいない子どもが6人いるんですけど、全員自分の子どものように向き合っています。いろんな境遇の子がいて、親がいて、みんなで次世代の子どもたちを育てていく。そんなイメージを持つと心が軽くなっていくんじゃないかな。
Q4. 数年前に子どもが生まれました。母親になってから、性的なことからどんどん遠のいている気がして、ときどき寂しい気持ちになることがあります。どうすれば、セックスがしたい、という気持ちや性的な関心をキープできますか?
A. もっと明るい気持ちで向き合うためにも、性教育は大切
セックスに対して羞恥心や忌避感がまとわりついていることや、長らく女性が「子孫を残すための財産」とされてきたことも、原因のひとつかもしれません。だから性に奔放になることは許されないと感じてしまう。本来、セックスは一つの命を産むほどに大きなパワーを秘めたもの。もっと明るい気持ちで向き合えたら意識も変わる気がします。だからこそ、子どもたちに対する性教育は大事。我が家では、娘が小さなうちから「愛する人には、裸を見せたくなるんだよ」「逆に大事な人以外には、見せないし触らせないんだよ」と伝えてきました。肌を通して特別な絆ができることは罪悪感を覚えることじゃない。美しいことだと改めて考えてみて。
Profile
Awich
エーウィッチ 1986年、沖縄県生まれ。2006年に渡米し'07年にデビュー。翌年、米国人男性と結婚、出産を経験。夫の他界後に帰国。'20年にメジャーデビューし、高い評価を得る。Netflixリアリティシリーズ『ラヴ上等』シーズン2では、MCとして出演中。
写真・Nae.Jay スタイリスト・ダヨシ ヘア&メイク・Chihiro Yamada 取材、文・嘉島唯
anan 2507号(2026年8月5日発売)より































