なぜ今、“ジャパンアイドル”が再注目されるのか?
アイドルのグローバル化が進む令和にあって、今また日本のアイドルが注目を集めている。そもそも日本のアイドル文化の始まりとは? 「実はその歴史は、半世紀以上前に遡るんです」と語ってくれたのは社会学者の太田省一さん。
「南沙織さん、そしてオーディション番組の『スター誕生!』が登場した1970年代初めが女性アイドルの始まりといわれています。南さんが名曲『17才』でデビューした時期、彼女は17歳。その等身大の魅力こそアイドルの一つの条件です。そして『スター誕生!』以来、オーディション番組とアイドル文化は切っても切り離せない関係に。アイドルの原石が段階を進むごとに成長した姿を見せる。そして人々はその成長を応援する。未完成なものに愛着を持ち、その成長を推したいという価値観は、高度経済成長とともに強まったと考えられていますが、その体現者がまさにアイドルなんです」
オーディション番組はネットの出現で参加型になり、今のアイドル人気の起爆剤にもなった。
「昭和の時代の視聴者もまたテレビの前で審査員目線で応援していたわけですが、今はネット投票やSNSで個人が発信できる時代になって、実際に審査に参加したりして応援できるようになりました。一方で女性アイドルの代名詞である“かわいさ”は変容してきています。’70年代から’80年代のアイドルは男性目線の“守ってあげたい”かわいさが魅力でしたが、現代ではかわいい=強さでもある。例えば『わたしの一番かわいいところ』でバズったFRUITS ZIPPERなど、生きていく上での強みとしてかわいさを打ち出したアイドルが同性の共感を集めています。韓国のガールクラッシュブームとは表現こそ違えど、芯の強さでは通ずるものがありますね。CUTIE STREETはその“かわいい”観をさらに進化させた存在でしょう。原宿発信のユニークな空気、代表曲の『かわいいだけじゃだめですか?』というワードのエッジの利いた響きも今の時代に合っています」
また松田聖子さんをはじめとした古今のアイドルソングが海外でカバーされるなど、楽曲にも世界から熱視線が注がれている。
「日本語の多様な歌詞表現があり、それにリードされてメロディもカラフルになるのが日本のアイドルソングの最大の魅力」と語るのは、自らもアイドルソングを手がける音楽家のジンツチハシさん。
「悲しい歌詞に悲しい音が重なったり、かわいい歌詞の部分でかわいい音が鳴ったり。歌詞と音が一体となって醸し出す抒情性が魅力です。また、音楽は、その時代のメインとなる媒体によって変遷していくもの。テレビ時代なら幅広い世代の共感を得る曲が人気でしたし、最近はTikTokの登場で、キラーフレーズを凝縮して詰め込んだ曲がバズる傾向に。CUTIE STREETの楽曲もまた、一瞬で心を掴むキャッチーなインパクトがあります」
スタイルと楽曲で、新機軸のかわいいを打ち出す令和アイドル。
「そこには『自分のかわいさは自分で決める!』という揺るぎない自分軸がある。いかにありのままで輝くか。それを示す存在として、今また日本の女性アイドル文化が輝きを放っているのだと思います」(太田さん)
PROFILE プロフィール
太田省一さん
社会学者、文筆家。社会学やメディア論の視点から、アイドルカルチャーをはじめとした戦後のテレビや芸能を研究、執筆。『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)など著書多数。
ジンツチハシさん
音楽家。CUTIE STREET「チョットヒトサジ」をはじめ、乃木坂46、ハロー!プロジェクトグループ、NMB48、HKT48、超ときめき♡宣伝部ほか多数の作品を手がける。
PROFILE プロフィール

CUTIE STREET
キューティーストリート 木村ミサさんプロデュースの「KAWAII LAB.」から2024年8月にデビュー。通称きゅーすと。8月からは1周年記念全国ツアーがスタート、10月のツアーファイナルは神奈川・ぴあアリーナMMで2days!
anan2445号(2025年4月30日発売)より