自分にとても似ているキャラクター。痛いくらい気持ちがわかりました。
「これまでは歌や音楽に助けられていたところもあるので、自分の言葉で先に進まなければいけないと言われているように感じています」
本作では摂食障害を患う大学生のレイチェルを演じる。母親のジョーン(寺島しのぶ)は移民として苦労をしながら弁護士のキャリアを築いたパーフェクトな女性。母からの期待は大きく、愛情があるからこそ二人の想いにすれ違いが生じ始める。
「レイチェルは自分を抑えた方が物事は円満に進むと、家族も気づかないくらい自然に、周囲の求める言動をしてしまいます。私も似たようなところがあるので、彼女の気持ちが痛いほどわかって、最初の本読みではボロボロ泣いてしまいました」
役との出合いには常々運命的なものを感じているという吉柳さん。
「このタイミングでこの役!? と思うことが多くありました。椎葉役もそうでしたが、向き合わなければいけない問題に目を背けてはいけないよと言われているような感じです。物語の中で役の女の子が救われる時、私自身も一緒に救われるような感覚になることが度々あるんですよね」
自分に近しいレイチェルを体現することは、その後の吉柳さんにも大きく影響しそう。始まったばかりの稽古では、演出の稲葉賀恵(かえ)さんや出演者とディスカッションしながら台本を読み込む作業をしているという。
「一場ごと丁寧に、それぞれのセリフに対してキャスト全員が対等に意見を交わせるような環境を作ってくださっています。『こんなこと(母親から)言われたら嫌よね?』と寺島さんが言ってくださったり(笑)。立ち稽古前に全員で想いを共有できるのはとてもありがたいです!」
レイチェルは詩を書くが、吉柳さんも書くことが大好き。気持ちに整理がつかない時には、ノートにひたすら綴り、徹底的に考えるのだそうだ。吉柳さんの役への深い理解はこうした作業に裏付けられている。
「家族という近しい距離だからこそ、相手のためにしていることが愛なのかエゴなのかわからなくなることがあるのかなと考えさせられました。友達の話を聞くような感覚で観ていただけたら。観てくださった方が何か一つでも持ち帰っていただけるような舞台にできればと思います」
PROFILE プロフィール
吉柳咲良さん
きりゅう・さくら 2004年生まれ。’17年『ピーター・パン』にて舞台デビュー。主な出演ドラマに『ブギウギ』『光る君へ』『御上先生』など。映画『白雪姫』プレミアム吹替版で白雪姫役声優を務める。’24 年アーティストデビュー。2nd single「Crocodile」が配信中。
INFORMATION インフォメーション

舞台『リンス・リピート―そして、再び繰り返す―』
施設での摂食障害の治療から4か月ぶりに帰宅したレイチェル。父母や弟との平穏な日常に戻ったかに見えた。しかし、自分を苦しめていたのは家族だったことに気づき始める。4月17日(木)~5月6日(火) 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA 脚本/ドミニカ・フェロー 翻訳/浦辺千鶴 演出/稲葉賀恵 出演/寺島しのぶ、吉柳咲良、富本惣昭、名越志保、松尾貴史 全席指定8800円ほか ホリプロチケットセンター TEL:03・3490・4949(平日11:00~18:00) 京都公演あり。
写真・小笠原真紀 スタイリスト・Kaz Nagai ヘア&メイク・折原絵理 インタビュー、文・黒瀬朋子
anan 2443号(2025年4月16日発売)より